背景
近年、畜産農家サイドでは、国内で口蹄疫やBSE問題などが発生したことにより、安全な国産飼料へのニーズが求められていました。しかし、その餌となる稲わらの収集は時期が限られており、飼養頭数の多い農家や経営規模の拡大を図る農家にとって、その収穫労働は過重になっていました。加えてBSE問題で中国産の稲わらの輸入停止も決まり、ますます経営縮小を考えなくてはいけない状態でした。
一方、水稲農家サイドでは、これまでに稲わらは一部収集されてはいましたが、多くは焼却やすき込みで無駄に処分されており、それを十二分に有効活用されていない現状がありました。
そこでわたしたちは、近年の輸入米によって国産米の価格が下落傾向の中、その稲わらを販売することで、多少の所得確保が図られるのではないかと考えました。またわたしたち後継者サイドでは、稲わらの収集時期に農閑期など重なり、時間的に余裕があり畜産農家サイドが確保できない収穫する時間が十分に取れました。
このように地域農家の異なる3サイドの利害の一致が見られて、さらに必要となる機器をそろえ始めてこの『農業生産法人 グリーンスマイル大分』を発足させました。
収集作業
以下は、実際の稲わら収集作業のプロセスです。
■反転・集草
反転はコンバインによる稲刈後、稲わらを十分に乾燥させるために圃場内で拡散(混ぜる)、十分に稲わらを乾燥させる作業です。 また集草は、ロールベーラーで稲わらを梱包しやすくするため小さな山にして、その列をつくる作業です。
■梱包
集草作業後、ロールベーラーで稲わらをロール(円柱状)にする作業です。
■ラッピング
この写真は、藁をロールにした後、ラップを開いて品質のチェックをしている所です。
■ロールの向上
この写真は、ロールにした後ラップを開いて品質のチェックをしている所です。
■品質管理 1
この写真は、天候の加減により稲わらが生乾きのままロールしたものを、再度天日干しにして、十分に乾燥させているところです。
■品質管理 2
この写真は、乾燥ロールの中の稲わらの水分が確実に抜けているのかを水分計によるチェックをこまめに行っています。
このようなプロセスは、稲わらや麦わらを収穫時に裁断しないであらかじめ圃場に残してもらって、わたしたちメンバーが自らの手で後に回収します。
その際黒カビの原因となる泥がまじらないように、水田をよく乾かすことが重要です。
よりよいわらを作り、畜産農家に安心して稲わらを買ってもらえるように日々努力しています。
堆肥散布システム
堆肥の流通がうまくいかない畜産農家から直接堆肥を仕入れて、稲作農家の圃場に散布することで、稲わらの購入費の実際のコストを削減し、グリーンスマイル大分は経営の安定を図っています。
また「堆肥はまきたいがまいてくれる人がいない」という地元の畑作である白ねぎ農家の等の要望や「わらの買取り」を希望する農家があれば、そのわらの代金と引き換えに堆肥をまくサービスも行っています。この様な取り組みによって地元の資源循環型農業をサポートしていきます。
加えて、圃場には水田や白ねぎの裏作を使うなど、輪作体系による連作障害対策や、農家の高齢化にともなう遊休農地対策などで、わたしたちが購入した機械を有効活用して、イタリアンライグスをそこで栽培するなどの、牧草栽培も開始しています。
『わらと堆肥の交換』という資源循環型農業の理想形と言えるでしょう。